貯水池の水環境を探る

貯水池の水環境を探る

湖や貯水池は,洪水防止などの治水上の役割に加え、水道水,工業用水,発電用水,灌漑用水など淡水の主要な供給源としての重要な役割を担っています。

ダムの新たな設置が難しい今日では,既設の貯水池を健康に保ち,長期間,有効に利用することが求められています.一方,高齢化にともない富栄養化が進行する貯水池を健全に保つには、湖内での水質状態、また、それらの流れによる輸送過程の把握に基づく、戦略的な水域管理が必要です。

そのために、日射等気象条件による水温変化などを考慮し、湖内水質・流動構造の時空間変化を解析可能な貯水池流動モデルの開発に取り組み、湖内プランクトンの増殖要因の検討等に利用しています。

上のアニメーションは貯水池での植物プランクトン増殖と,それによる湖水異臭味発生について,それらが発生する条件を研究する一環として貯水池内での水温分布を3次元的に計算したものです.シミュレーションモデルには研究室独自開発のTITech-WARMを使用し,気温,日射,風速など気象データを入力として水温変化を計算しています.夏季の計算を行い,高い気温と強い日射により,水面付近の水が選択的に温められ,水面付近に高水温層が形成されるようすが確認できます.

環境研究では実験室や方程式などに基づく研究とはことなり,実際の現場を対象とすることに特徴があります.実際の水環境で生じる問題や現象は無数の要因が作用した結果の総体として生じます.一方,シミュレーションでは実際の環境から現象に重要と思われる要因のみを取り出し,コンピュータ上で限られた要因のみからなる環境が模擬されます.そのため,環境研究を進める際には,まず現地で何が生じているのか?を実際の現地に赴き,観測を行うことが重要です.また,実際の環境とシミュレーションとの間には必ず差異が生じます.シミュレーションにより環境を考察するためには,その差異が十分に小さいことを確認することが重要となります.以上のような理由から,実際の水環境を進める際には,現地観測を多くの場合実施することになります.

現地観測の様子