河川の水環境を探る

河川汽水域の塩水流動

河川は湖や貯水池に比べ継続的に流れが存在します.その結果,流れによりドラスティックな変化が生じる領域です.河川では河道断面形状や,河川蛇行などの地形条件により3次元的な流れが生じるなど,流れの時空間的変化を詳細に検討することが環境現象の理解に必須となる水域です.

上のアニメーションは河川の河口付近(汽水域)の解析結果です.汽水域では海から塩水が河川内に侵入し,時には数十キロメートルに渡り河底付近を遡上します.こうして滞留した塩水内部では,水面付近の水との交換が低下し,水中の酸素濃度が低下する恐れがあります.そのため,侵入した塩水の挙動を把握することが,河口付近での環境を考える際に非常に重要となります.複雑な地形形状から3次元的な流れが生じる領域の塩水挙動を解析するため,研究室で開発した3次元並列流動モデル(TITech-WARM)を適用し,健全な環境を実現するための基礎的な知見を把握しました.

下のアニメーションは河口付近での汚泥堆積を検討した事例です.一番下の赤い棒グラフが河床面への堆積量を示しています.上流から運ばれる汚泥は水深が深くなり,勾配が緩やかとなる汽水域に入るとすぐに沈殿し,堆積をします.しかし,降雨時など上流からの流量が増加すると,その速い流れにより河床面上を下流へ輸送されて,酸素の乏しい塩水くさび内部に汚泥が堆積するようになると考えられます.貧酸素下では有機汚泥は嫌気性細菌による分解され,副産物のガスは悪臭の原因となります.