研究室で培った知見やシミュレーションモデルを基に,海外における環境改善に貢献するべく海外の大学や研究者との協同研究に取り組んでいます.海外に興味がある,国際貢献に参加したい意欲のある学生と一緒に取り組んでいます.
カンボジア王国 トンレサップ湖の水環境プロジェクト
トンレサップ湖(Tone Sap Lake)は200km程度の広がりを持つ東南アジア最大の湖です.周辺には稲田が広がるとともに,その漁業はカンボジアで消費される半分以上のタンパク質を供給しているとされるなど,地域の文化と生活を支える重要な水域となっています.雨季と乾季に別れる同国では,乾季には水深は数メートルと非常に浅くなる一方,雨季には下流のメコン川からの逆流により面積が約6倍に広がるなど,特異な水理特性を持っています.
近年の工業化による工場排水の増加,化学肥料・農薬の使用増加に加え,ボートハウスなどで水面上に居住する数十万人からの生活排水により富栄養化(湖水中の窒素・リンなど栄養塩濃度の増加)が進展しつつあり,それによる水質の悪化が危惧されています.
不幸にも1980年ごろまで続いたカンボジア内戦により,観測体制と専門技術者・研究者は十分でない状態です.このプロジェクトではカンボジアの大学研究者と一緒に現地観測を行って基礎的なデータを蓄積するとともに,これまでの国内の水環境の研究で蓄積した知見をもとに,トンレサップ湖の状態を把握し,今後の管理に利用してもらえる流動モデルを開発することを目指しています.
下のアニメーションは新たに開発した流動シミュレーションモデルの計算結果です.GPGPUとよばれるシミュレーション高速化技術を使用することで,200km四方に広がる広大な領域について,1年間もの長期間の解析をわずか2時間で終えることを可能としています.
下は現地観測の様子です.ボートハウスの集落の様子が確認できます.