河川での水難事故防止の啓発に研究成果を使っていただきました

 

公益財団法人 河川財団 は「健全な河川生態系や水循環系の保全・再生、合理的な河川維持管理手法の開発や良好な水辺利用の促進」など,我が国の河川に関わる広範な活動を行なっています.本研究室で行いました溺水シミュレーションが河川財団のYouTubeチャンネルで公開されることになりました.河川での事故の特徴として「速い流れの存在」があります.そのため,流水中に潜む流木など障害物に体が接触した場合,流れにより障害物に押し付けられ,水中で身動きができなくなる事故(ボディ・エントラップメント)が起こることがあります.事故による被害を防止するためには,「水場に近づく場合はライフジャケットを着用する」ことに加え,流れがあるところで水に落ちたときには「膝とつま先を持ち上げた漂流姿勢で流される」ことも重要となります.

 

ボディ・エントラップメント

河川事故の一つにボディ・エントラップメントがあります.流水中に潜む木など障害物へ体が接触した場合,流水の大きな力で体が障害物へ押し付けられ,身動きが取れぬまま溺水してしまうことがあります.流速2m/sのシミュレーションでは体には実に200kg重程度の力により,体が障害物に押し付けられる結果となりました.

可視化[路地への津波]

津波が路地へ侵入した場合のシミュレーションを講義として実施しました.高さ2mの津波が路地の両方から侵入したと仮定しています.自動販売機や自転車など,路上にある多くの物体が津波とともに人体へ襲いかかります.物体との衝突は,津波の危険性を増加させるとされており,今後も研究を続けるテーマとなっています.

最近の研究

河川には水難事故が繰り返し起きる「危険箇所」があります.河川が大きく屈曲したり,突然水深が深く掘れている場所などでは流れに危険な渦や下降流が生じることが原因のひとつとされています.研究室では人体と流れのシミュレーションモデルを用い,実際の河川の「危険箇所」をコンピュータ内に再現し,危険性を評価する研究を開始します.

研究室訪問

学部生が研究室を訪問してくれました。参加した学生は自分で問題設定をし、研究室で開発している人体ー流体連成シミュレータDRUMを用いたシミュレーションを行ってくれました。階段を歩行している人が津波にどのように巻き込まれるのかについて疑問を持ち、解析をしてくれました。動画は高さ5mの津波のケースです。若い皆さんの素直な、形に縛られない発想は新たな研究テーマを教えてくれます。研究室では私達の研究室や研究テーマについて興味のある方の訪問をいつでも歓迎します。ぜひご連絡ください。

 

可視化

滝付近では水難事故がよく発生します。勢いよく落下してくる水は大変気持ちよさそうですが、滝壺でどのような流れが形成されるのか、また、その危険性はよくわかっていません。現在、人体と流れの同時シミュレーションモデルを滝壺の流れに適用し、その危険性を評価する研究を開始しました。以下は計算規模を検討するための単なる試行シミュレーションで、これから実際の滝の地形や水理学的状況の再現に取り組んで行きます。

水工学論文奨励賞を受賞しました

昨年、修士2年生の学生が執筆し、土木学会論文集に掲載された論文「人体-流動連成数値解析による高所からの落水事故の傷害リスク評価」が「水工学論文奨励賞」を受賞しました。この研究は学生さんのアイデアで取り組み始めたもので、橋など高所から水面へ落下することの危険性を評価したもので、今後の事故防止に役立つと期待しています。

おめでとうございます!